地名に残される一口(いもあらい)や芋洗い(いもあらい)は、
どちらも疱瘡を意味するイモに由来しています。
奈良県の近鉄橿原神宮前駅近くに佇む芋洗地蔵。
おふさ観音から吉野方面へ向かって国道169号線を進んで行くと、左手に木の茂った静かな空間が広がります。車の中からではなかなか分かりませんが、歩いて橿原神宮駅付近をぶらぶらしていると、スーパーの駐車場の横に何やら石標らしきものが建っています。
芋洗地蔵の祠。
巷では疱瘡の地蔵さん、一口地蔵さんと呼ばれています。
近くの久米寺ゆかりの久米仙人にまつわる話にも興味深いものがあります。
久米仙人が飛行中に、川の畔で芋を洗っていた女性の白いすねを見て、神通力を失い落下したと伝えられる逸話です。この場合のイモは、女性を表す妹(いも)にも通じているのでしょうか。
芋洗いは疱瘡祓い(いもはらい)にも通じ、子供たちが疱瘡に罹らないように祈った大人たちの願いが感じられます。村の入口(一口)から入ってくる疱瘡を追い払うために作られた芋洗地蔵。そんなふうに考えることもできるのではないでしょうか。
疱瘡の魔力は久米仙人の神通力をも失わせた。
ちょっと穿った視点ではありますが、そんな捉え方もできるのではないでしょうか。