三の字鯛(サンノジダイ)とも呼ばれるニザダイ。
ニザダイの名前の語源を探っていくと、新背(にいせ)という言葉に行き着きます。
冬に旬を迎えるニザダイ。
古語の世界では愛しい男性や夫のことを「背(せ)」と表現します。女性の妹(いも)に対する言葉ですが、古語を用いた歌の中にも「わがせ」という表現がよく見られます。
新しく大人の仲間入りをした、いわゆる若者組に入ったばかりの新顔を新背(にいせ)と言います。
ニューフェイスの新背は、未熟な若造を意味する青二才の「二才」にも通じます。
新背(にいせ)と二才(にさい)は、お互いに言葉の響きがどことなく似ていますよね。
ニザダイ(三の字)が下、上に写っているのが「むつ」です。
ニザダイの名前は、新背(にいせ)の鯛に由来します。
鯛という高級魚仲間の下っ端と申しますか、やっとこさで鯛の仲間入りを果たした魚というような意味合いで、ニザダイと名付けられています。青二才の鯛とは名ばかりで、冬の活けで頂く味はなかなかのものです。
尾っぽの付け根に三つの骨質板が並んでいます。
鯵でいうところの「ぜいご」に当たる部分に、硬い突起物があるのが特徴です。上から見ると、ちょうど三の字に見えるところから、三の字鯛、あるいは三の字ハギとも呼ばれます。
ニザダイの名前の由来には、古語における「背」という言葉が関係していたんですね。
それにしても、なぜ男性を指し示す言葉が「背」だったのでしょうか。男の背中は古来より、何かを物語っていたのかもしれませんね。