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アイゴの皿ねぶり

アイゴの皿ねぶりという言葉があります。

アイゴ(藍子)という魚には、最後の最後まで食べ尽くしてしまいたいと思わせるほどの美味しさがあるということを意味しています。アイゴを旨いと評する人もいれば、その一方で小便臭くてあまり好きにはなれないという人がいることも事実です。

アイゴ 藍子

スズキ目アイゴ科に分類されるアイゴ(藍子、阿乙呉)。

西日本の暖かい岩礁域に生息する魚で、雑食性ながら海藻を好んで食べることから、モクライ(藻食らい)という呼び名もあります。

アイゴの内臓

水洗いでアイゴの内臓を取り出します。

深い緑色をした独特の内臓です。ちょっぴり臭いのが気になりました(笑)

地方によってアイゴの名前は多岐に渡り、アイ(棘)、アイノバリ(棘尿)と呼ばれることもあります。鰭の棘に毒があるため、取り扱う際には注意が必要です。幸いにもスーパーで購入してきたアイゴには既に鰭が付いていませんでした。お店の方で処理して頂いたようです。

毒性のある棘が特徴のアイゴですが、尿にまつわるお話が尽きない魚でもあります。

アイゴの尾びれ

アイゴの尾びれ。

アイゴの幼魚はバリコと呼ばれていますが、アイゴの異名であるアイノバリ(棘尿)の「尿(バリ)」と同じ意味を表します。尿(ばり)とは、そのものズバリで小便のことです。尿(ばり)は尿(ゆばり)の略で、下賤な用語として人の小便を指すこともありました。

広辞苑を紐解いてみると、膀胱のことを尿壷(ゆばりつぼ)、あるいは尿袋(ゆばりぶくろ)と表現しています。もう少し詳しく調べてみると、どうやら尿(ゆばり)は尿(ゆまり)の転じた言葉のようです。

アイゴとタカノハダイ

手前がアイゴで、向こう側がタカノハダイ。

言葉を追い掛けていくのは面白いもので、古語辞典を紐解いてみると、尿(ゆまり)とは湯放(ゆまり)を意味しているのではないかと解説されていました。確かに尿は水よりも、ほんのり温かいお湯に近いものがあります。

古語の世界には、「放る(まる)」という他動詞が存在しており、大・小便をするという意味を表します。神代記にも、「屎(くそ)まり散らしき」と出ています。では、自動詞ではどうなのかと調べてみると、大便をするという意味で、「糞まる(くそまる)」という言葉に出くわしました。

現代語でも頻繁に使われる御虎子(おまる)は便器のことですが、古語の「くそまる」に端を発していたとは、今の今まで知りませんでした(笑)

美味で知られるアイゴから、思わぬ方向に展開した今回の言葉の旅。

アイゴの皿ねぶりから御虎子(おまる)まで、果てしなく言葉の旅路は続いていきます(笑)

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2013年11月26日 09:52に投稿されたエントリーのページです。

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